新車のバイクは慣らし運転が必要って聞くけど、
どういうこと? 間違えて大切な愛車を傷つけたくないし、正しいやり方を知りたい!
こんなお悩みを解決します。
慣らし運転の結果は、その後のバイクの寿命やエンジンパフォーマンスに大きく関わります。大切な愛車のことを考えれば、絶対に失敗したくないですよね。
そこでこの記事では、慣らし運転に関する基礎知識、正しいやり方と手順、注意点などを解説します。
この記事を読めば、バイクの慣らし運転がぜんぶわかりますよ。
この記事を書いている僕は、2019年夏に大型バイク(MT-07)を新車購入し、慣らし運転を完了。ここで紹介する方法で、エンジン性能を100%引き出せるベストな状態に仕上げました! 2021年秋までに総走行距離4万キロを超えましたが、何のトラブルもありません。
簡単に読めるので、慣らし運転を確実に成功させたい人は、最後まで読んでみてくださいね。
慣らし運転の基礎知識:意味・理由・効果・期間とは
本題に入る前に、慣らし運転の基礎知識について説明しておきますね。
ポイントを簡単にまとめると、次のとおりです。
- 意味:新車購入直後の高負荷走行を避けること
- 理由:エンジン内の部品をよくなじませるため
- 効果:バイクの寿命を延ばすことができる
- 距離・期間:1,000km走行時までか納車後1か月まで
一つずつ、解説していきますよ。
意味:新車購入直後の高負荷走行を避けること
バイクの慣らし運転とは、新車購入直後の高負荷走行を避けることです。
具体的には、エンジン回転数を高回転まで回さずに抑えながら、車両に高負荷をかけずにやさしく乗ってあげます。
購入したバイクの取扱説明書を見ればわかりますが、そこには慣らし運転について必ず記載があるはずです。つまり、メーカーが「新車には慣らし運転が必要」と言っているのです。
では、なぜ慣らし運転が必要なのでしょうか?
意外と知られていない、その理由についても触れましょう。
理由:エンジン内の部品をよくなじませるため
慣らし運転が必要な理由は、エンジン内部等の各部品を互いによくなじませるためです。
エンジンは金属部品のかたまりで、無数のパーツが組み合わさっています。
しかし、いくら高精度に組み立てられているとはいえ、微妙な個体差や誤差があり製造直後はまだよくなじんでいないものです。また、各部品にはバリ※があります。
※金属の加工後にできる突起やギザギザのこと
そのため、最初のうちは穏やかにエンジンを動かすことで、各部品の角を取りながら徐々になじませていく必要があります。
こうすることで、部品同士がミクロレベルでぴったりとかみ合い、いわゆる「アタリ」がついたエンジンになるのです。そして、本来の性能を十分に引き出せるようになります。
もし慣らし運転をせずにいきなり高回転まで回してしまうと、金属がエンジン内部を傷つけてしまうことになるので注意してください。
大切な愛車のエンジンに傷をつけるようなことは、絶対に避けたいですよね。
効果:バイクの寿命を延ばすことができる
慣らし運転をするよい効果として、バイクの寿命を延ばすことができます。
各部にアタリがついてしっかりなじんだエンジンは、本来の性能が引き出されて、高回転負荷や長期使用にも耐えられるようになります。
バイクの心臓部であるエンジンが長持ちすれば、当然バイクの寿命も延びます。
慣らし運転を正しく行うことで、5万キロも10万キロも走るような元気なエンジンを手に入れ、愛車の寿命を延ばしましょう!
距離・期間:1,000km走行時までか納車後1か月まで
慣らし運転を続ける期間は、一般的に「走行距離1,000キロまで」または「納車後1か月」です。
なぜかというと、新車購入後には必ず初回点検というものがあり、このどちらかのタイミングで初回点検をすることになっているからです。
この期間を長いと感じるか短いと感じるかは人それぞれでしょうが、大切な愛車をじっくりと育てていく期間と考えれば、楽しい時間になりますよ。
僕はある種の儀式だと考えていて、「慣らしの儀」と呼びながら日々楽しんでいました(笑)
以上、基礎知識について解説してきました。
バイクの慣らし運転の正しいやり方と手順3つ
いよいよ、慣らし運転の正しい方法と手順について解説していきます。
次のとおり、守るべきポイントはたった3つだけ。とても簡単です。
- 手順①:「急」のつく運転を避ける
- 手順②:指定回転数以下で走行する
- 手順③:不要な空ぶかしはしない
一つずつ、解説していきますよ。
手順①:「急」のつく運転を避ける
まず大原則として、急のつく運転をするのは避けましょう。
具体的には、次の3つの急です。
- 急加速しない
- 急ブレーキしない
- 急旋回しない
こうした急のつく運転は、バイクに高い負荷(ダメージ)を与えてしまいます。
スロットルをじわっと開ける、ブレーキをじわっとかける、バイクを寝かさずにゆっくり曲がるなど、丁寧な操作を心がけましょう。
難しく考える必要はなく、教習所で習ったような基本の操作を実践すればいいのです。
ちなみに、慣らし運転はエンジンだけでなく、その他のパーツも対象として含みます。
次のような各部のパーツも、慣らし運転中に徐々になじんでアタリがついていきます。
- タイヤとホイール
- チェーンとスプロケット
- ブレーキパッドとディスクローター
- 前後サスペンション
そうした全体のパーツ一つひとつに意識を向けていけば、運転も自然と丁寧なものになるはずです。
負荷の高い運転は控え、3つの急=「三急」を避けた運転を心がけましょう。
タイヤの皮むきと慣らしについては、以下の関連記事が参考になりますよ。
手順②:指定回転数以下で走行する
慣らし運転中は一般的に、レッドゾーンの半分程度の回転数に抑えることとされています。
例えば、レッドゾーンが10,000rpmだとしたら、半分の5,000rpm以下に抑えて走るということですね。
具体的には、購入した車両の取扱説明書に、慣らし運転中の回転数について記載されています。その数値を確認したうえで、メーカー指定の回転数以下で走行するようにしましょう。
瞬間的に指定回転数を多少超えてしまっても問題ないので、神経質になる必要はありませんよ。
手順③:不要な空ぶかしはしない
ギアがニュートラル時にアクセルを開けるなど、不要な空ぶかしは避けましょう。
慣らし運転では、負荷の高い走行を避ける必要がある一方、適度に必要な負荷をかけてあげる必要もあります。
空ぶかし=ギアが空転している状態ですから、エンジン各部に適切な負荷がかかりません。また、スプロケットもチェーンも回っていないので、駆動系にも適切な負荷がかかりません。
マフラーを社外品に変更した場合など、空ぶかしして排気音を楽しみたい気持ちもわかりますが、慣らし運転中は不要な空ぶかしはしないほうがいいです。
以上、慣らし運転の正しい手順3つについて解説してきました。
まずはこの手順を守って走行するのが大事ですが、実はその他にも知っておくべき注意点があります。
間違えるとこわい!慣らし運転の注意点4つ
慣らし運転で間違えるとこわい注意点は、次の4つです。
- 注意①:じっくりと時間をかけること
- 注意②:極端な短距離走行は避ける
- 注意③:各ギアをまんべんなく使うこと
- 注意④:回転数を段階的に変化させる
ちゃんと手順を守っていたつもりが、慣らし運転に失敗してしまった…
なんてことにならないよう、この注意点をしっかりと押さえましょう。誰だって、愛車の寿命を縮めるようなことはしたくないですよね。
一つずつ、詳しく解説していきますよ。
注意①:じっくりと時間をかけること
慣らし運転には、じっくりと時間をかけましょう。
エンジンの各部品がなじむのは、一朝一夕にはいきません。バイクは乗って降りる度に、エンジンが温まったり冷えたりします。
エンジン内部はこうした温度変化も想定して設計されているので、温→冷→温→冷を繰り返すことで各部がなじんでいきます。
そのため、1回で長距離を走るのではなく、何日もじっくりと時間をかけるほうが、慣らしの効果は高まります。
1日の走行距離を100km以内に抑えることを目安に、数週間~1か月程度かけて慣らしていきましょう。
たまにSNS等で「2日間で1,000km走ったから慣らし終了!」などの投稿を見ますが、こうした極端な乗り方は避けたほうがいいですよ。
注意②:極端な短距離走行は避ける
慣らし運転中は、極端な短距離走行を避けましょう。
前述のとおり、エンジンの温冷によって各部がなじんでいきます。
市街地で10分程度のチョイ乗りしかしない…
このような短距離走行では、エンジンが温まらず冷えた状態のままになってしまいます。
極端な長距離走行もよくないですが、街乗りであれば1回あたりの運転で15km以上は走るようにしましょう。
注意③:各ギアをまんべんなく使うこと
慣らし運転中は、各ギアをまんべんなく使って1,000km走りましょう。
エンジンにはトランスミッションと呼ばれるパーツがついていて、その中にはギア(歯車)がたくさん入っています。
例えば、6速MT車(マニュアル車)であれば、1速~6速分までの歯車が入っています。
すべてのギアを平均的に使えるように、回転数と走行スピードを意識しながら、適切にシフトチェンジする必要があります。
排気量の小さなバイクであれば、街乗りですべてのギアを使いきれるかもしれません。しかし、パワーのある大型バイクなどは、街乗りで6速まで入れるシーンなど皆無です。
そのような場合には、「街乗りでは1速~3速、高速道路では4速~6速」のような乗り方でうまくギアを使ってあげましょう。
ツーリングの行きは下道を、帰りは高速を使えば簡単にこうした走りができますよ。
「慣らし運転中に5速や6速をほとんど使わなかった…」とならないように気を付けましょう。
注意④:回転数や加速感を段階的に変化させる
指定回転数以下で漫然と走るのではなく、段階的に回転数や加速感をあげていくなどメリハリをつけて走りましょう。
例えば、指定回転数が5,000rpm以下だとしたら、最初の100kmまでは3,000rpm以下、次の100kmまでは4,000rpm以下、次の…という感じです。
このように、使用する回転数を変化させていき、エンジンへの負荷を徐々に上げていくことで、慣らしの効果は高まります。
また、急のつく運転を避けながら、加速感を徐々に強めていくことでも負荷を上げることができます。
具体的には、スロットルの開け方を「じわーーっと」→「じわーっと」→「じわっと」という風に、段階的に変化させます。
繰り返しますが、くれぐれも急加速はしないでくださいね。アクセルを「ガバっと」開ける、いわゆるガバ開けは厳禁です。
これらの他に、メーカー・車種別の注意点等もありますよ。
発展的内容になりますが、気になる人は後で以下の関連記事もチェックしてみてください。ヤマハのスーパーバイク「YZF-R1」の特殊な慣らしについても紹介しています。
まとめ:正しいやり方で大切な愛車の寿命を延ばそう!
以上ここまで、バイクの慣らし運転の基礎知識、正しいやり方3つ、注意点4つについて解説してきました。
初めてバイクを買う初心者でも、ここで紹介した手順と注意点を守ることで、大切な愛車の寿命を延ばし、長く乗り続けられるようになりますよ。
また、エンジン本来の性能が十分に引き出され、より気持ちよくライディングを楽しめるようにもなります。
いろいろと意識するのは大変だと思いますが、愛車との対話を楽しむ時間だと思って、じっくり取り組んでいきましょう。
- 慣らし運転は1,000kmまたは1か月の間続ける
- 急のつく運転を避ける。指定回転数以下で走る。不要な空ぶかしはしない
- 短期間で終わらせない。短距離走行は避ける。各ギアをまんべんなく使う。回転数や加速感を段階的に変える
この手順に沿って、ぜひ慣らし運転を成功させてくださいね。
慣らし運転が完了すると、いよいよ本格的なツーリングがはじまります。
以下の関連記事では、ツーリングに最低限必要な持ち物、あると便利な装備などを紹介しています。
準備不足で困らないよう、遠出の前に確認してみてくださいね。チェックリスト形式で簡単にわかりますよ。
そのほかにも、「慣らし運転後にやるべきこと」や「東京都内の慣らし運転ルート」についても解説しているので、あわせてチェックしてみてくださいね。
取扱説明書にかかれているような内容で初心者向きでした。
実際に何台も自分で慣らしをされた経験等が知りたかったです。
>>ミクマリ様
コメントいただきありがとうございました。ご参考になったようで嬉しいかぎりです。確かにそうですね。次に新車を買ったときは慣らしの記録を取って、実践レポート記事としてアップしてみようと思います。