2022年夏、7日間の北海道ツーリングを達成。ライダーが一度は走るべき、絶景ロードをたくさん巡りました。そんな感動ツーリングの様子を、デジタル一眼の高精細写真で詳細レポート。旅のモデルルートとして、あなたの企画に役立ててください。
7日目は、三国峠やナイタイ高原、日勝峠などの絶景ロードを走ります。
最終回にドラマはつきもの。この旅にも、絶望的なトラブルの後に奇跡的な展開が待ち受けていました。
それでは、北海道ツーリングのフィナーレを飾るとしましょう。
Day7ルート概要
最終日は、上士幌⇔三国峠間を往復し、日高山脈を越えて苫小牧港フェリーターミナルへと向かいます。
上士幌⇒三国峠⇒ナイタイ高原牧場⇒帯広市街⇒幸福駅跡⇒日勝峠⇒苫小牧港
Day7のルートはこんな感じ。
早朝、霧一面のキャンプ場
最終日の早朝、早起きしてテントの外に出てみるとご覧のとおり、あたり一面が霧に包まれていました。
町全体がすっぽりと朝霧に包まれているみたいです。
「これはダメかもなあ」と、肩を落としながらテントを撤収。
朝日に照らされながら走る至高のライディングを期待していたのですが……
まあとにかく、行ってみることにしましょう。
現地に行くまでまだ勝負はわからない!
糠平国道を走る
上士幌から三国峠に向かって、糠平国道(国道273号)を北上していきます。
市街地はまだ霧が立ち込めていましたが、山間部に近づくにつれ、だんだんと霧が晴れてきました。
高度を上げると青空が広がる
ぐんぐんと高度を上げていくと、そこには青空が広がっていました。
素晴らしい青空! やっぱり来てよかった。
それにしても、空模様を読むのは難しい……
だけど、考えてみれば「低地は霧でも高地は晴天」みたいな状況は、これまでも何度かありました。
だから、「峠は晴れてるかも?」と体が経験で覚えていたのかもしれません。
来るのがもう少し早ければ、すごい雲海が見れたかも。
白樺並木のロングストレート
この道のハイライトの一つが、白樺並木のながーい直線路。
こんな感じで、美しい白樺林の中を爽やかに疾走することができます。
一気に駆け抜けるもよし、立ち止まって写真撮影するもよしの絶景道。
新緑の白樺が、まぶしいぐらいに美しい。
松見大橋を行く
白樺並木を超えると、峠が近づいてきます。
そして、この道の最大のハイライトとなる「松見大橋」へとアプローチ。
見渡すかぎりの原生林の中を、巨大な人口建造物が貫きます。
橋上を走っていると、まるで針葉樹林の絨毯の上を進んでいるような気分。
気分は最高潮!
三国峠からの絶景
坂道を上りきったら、三国峠から素晴らしい眺望が楽しめます。
大原生林を見渡す圧倒的な眺望に、思わず身震いしてしまいます。
こんな景色は、ここでしか見られません。
上士幌から片道1時間近くかけて、走ってきたかいがありました。
峠でゆっくりした後は、ピストン走行でいま来た道を引き返します。
この感動風景のためだけに、早起きした。
ナイタイ高原牧場
上士幌に戻り、ナイタイ高原牧場にやって来ました。
緑が広がる壮大な景色を楽しめる、日本一広い公共牧場です。
霧隠れの高原
ところが、麓の盆地はまだ霧に包まれています。
本当はここからすごい絶景が見られるんですが、今はガスで何も見えません。
景色がダメなら、牛たちでも眺めようかと振り返ると……
うん。そうなるよね。
この霧じゃあ、牛さんたちもだらけるしかないですね。
気を取り直して、旨い牛肉が食べられると評判の「ナイタイテラス」で食事します。
絶品! ナイタイ和牛のハンバーガーを食す
牧場で育ったナイタイ和牛の旨みをそのまま凝縮した、名物ハンバーガーをいただきます。
サイドドリンクはコーラ……じゃなくて、鮮度抜群のアイスミルク。
がぶりと豪快にかぶりつくと……
ばっ! 抜群に旨い!!
甘味すら感じる肉汁がじゅわっと溶け出し、幸せな旨みで口内が満たされます。
オーソドックスな構成とシンプルな味付けゆえ、噛むほどにあふれ出す和牛本来の旨み。
「間違いなく和牛100%の肉を食っているぞ!」という誇り高い気持ちになれますね。
旨すぎて、ふるさと納税で速攻ポチった。
満腹で気分上々になり、次なる目的地へと向かおうとしていたところ……
この日1回目となる、偶然の出会いが訪れます。
邂逅! 出川さんに出会う
な、なんと! 出川さんが電動バイクで走る、あの番組撮影に遭遇!
ナイタイ高原から華麗に走り去っていく姿を撮影。
気さくな感じでその場のライダーに声をかけていて、テレビで見るそのままっていう感じが印象的でした。
写真のように、バイク2台とバン1台で撮影行脚してるみたいですね。
最終日は何かが起きるような予感がしてましたが、まさか有名タレントに出くわすとは。
霧も吹っ飛ぶような衝撃の出会いで、興奮冷めやらぬ状態です。
なんか今日は、ほかにもドラマが起きそう。
ナイタイ高原を後にして、帯広市街地へと南下します。
やっぱりこれだね、十勝豚丼
熱心な読者の方は、2つの疑問が浮かんだかもしれません。
- さっきハンバーガー食べたよね?
- ていうかDay5から3日連続で豚丼?(しかもこれ同じやつDay5で食べてない…?)
答えは、両方 YES。
意味もなく自信満々で肯定。
一応、理由を説明しておくと、
- さっきのハンバーガーは意外と重くなかったし、本日はたくさん走るのでたくさん食べておきたかった。
- このお店の豚丼は最終日にもう1回食べると、最初から決めていた。
って感じです。
いつでも何回でも食べたい味ってこと。
朝食後の早すぎる昼食にもかかわらず、ぺろりとたいらげました。
白米とタレのコンビネーションがたまらん。
さて、がっつり牛・豚肉メニューで体力をつけたら、「しあわせ」を探すバイク旅に出かけますよ。
幸福駅跡でしあわせを得る
続いてやって来たのは、幸福駅跡。
「愛の国から幸福へ」のキャッチフレーズで有名になった、旧国鉄の廃線跡です。
恋人の聖地としても有名で、いまでは観光地として人気のスポットです。
せっかくなので僕も、愛車と訪れた記念に写真を撮っておきます。
「幸福になれるといいなあ」などと夢想しつつ、次の目的地へと向かいます。
いや、向かおうとしたところ……
あれ……なんか体が重くて、動けない。
トラブル発生! 熱中症で動けない…
しあわせを願った矢先に、トラブル発生。
幸福駅跡からえりも町を目指し南下していたところ、めまいと頭痛で動けなくなりました…
快晴でぐんぐん気温が上がっていた中で走りづめだったので、ちょっとした熱中症になってしまったようです。
(かんかん照りで気温30°は軽く超えてた)
これはやばいぞ……
結局、30分ぐらい横になっていたら、だんだん回復してきました。
とはいえ、まだ体調が万全ではないため、急遽ルートを変更。
襟裳町まで向かう南下ルートを諦め、日勝峠を経由する日高山脈超えルートを選択。
また帯広方面に戻る。
一期一会! 十勝の母からの贈りもの
この世は不思議なもので、不運の後には幸運が訪れるみたいです。
すっかり意気消沈していた僕に、思いがけない素敵な出会いが訪れます。
帯広市街でガソリン給油していると、隣のレーンにいた農家風のおばあさんから声をかけられました。
おばあさん「バイクでどこまで?」
ぼく「苫小牧港まで。今日帰ります」
おばあさん「そう。はい、これトマト」(ぼくの方に差し出す)
ぼく「ありがとうござ……えっ!? トマト?」
おばあさん「そう。無農薬のフルーツトマト。売れ残ったから持ってけ。美味しいよ!」
ふるけんはトマトを手に入れた。
実はこのおばあさん、今は亡き夫がクルマ好きだったようで。若い頃は、夫婦で一緒にサロベツ原野などをドライブしたそうな。
そんなわけで、北の大地をバイクで旅するぼくを見かけて、応援してくれたみたいです(ありがたい)。
考えてみると、この日2回目となる偶然の出会い。
頭に浮かぶのは、「一期一会」ということば。
最終日にこんなドラマが用意されていようとは、いったい誰が想像できたでしょう?
奇跡的な出会いと十勝の母からの贈りものにより、再び前に進みだすパワーが湧いてきました!
今後あのおばあさんのことは、十勝の母と呼ばせていただく。
奇跡の復活劇! フルーツトマトでHP回復
そんなこんなで手に入れたトマト。
実際食べてみると、酸味よりも甘みが断然強く、まさにフルーツみたいな味わいです。
しかも一粒がかなり大ぶり。赤くて丸っこいボディの中に、十勝平野の恵みがたっぷりと詰まっているのでしょう。
食べ終えると、残り2割を切っていたHPが、ぐーんと回復していきます。
熱中症を吹き飛ばし、体に元気が戻ってきました。
マキシムトマトでHP全快!
十勝平野を走る
広大な平野を駆け抜けながら、日高山脈に向かって進みます。
黄金色の小麦畑と日高山脈
時間にあまり余裕がない中、足を止めずにはいられない素敵な景色に出会います。
収穫期を迎えた黄金色の小麦畑と、その先にそびえる日高山脈。
見慣れない景色のはずなのに、心のふるさとが刺激され、なぜか郷愁を感じてしまいます。
大地の恵みと人々の営み。
畑を縦横無尽に駆ける重量級コンバイン
さすがは北海道。大規模農業を支える農業機械も、これまたサイズがでかい。
重量級の体躯をやすやすと操りながら、金色の絨毯の上を縦横無尽に駆け回ります。
この後、ダイナミックターンを決めてくれました。
終わりが近づいているからか、いまこの瞬間に見た景色を忘れたくないという気持ちになってきました。
夏満喫! 北の大地もこれで見納め
というわけで、見納めとなる北の大地をバックに、わが愛車との旅の思い出を切り取ります。
7日間の旅路の果て。男たちのツーショット。
ストーリーのある写真。
日勝峠を走る
いい感じの写真で締めくくりたいところですが、旅はまだ終わりません。
日高山脈を越えて苫小牧港までは、150km以上あります。最後の力を振り絞り、ライディングに集中します。
日勝峠から見下ろす十勝平野にさよならを告げ、ひたすら国道を突き進みます。
連日の長距離走行とキャンプツーリングで、さすがに疲れがピークに達してきました。
途中で休憩をはさみながら、なんとか無事に苫小牧港までのルートを完走。
ゴールに到着です。
やり切った!
苫小牧港にてフェリーを待つ
フェリーに乗船し、あとは出航を待つだけの状態になりました。
いまはただ充足感で心がいっぱいですが、北の大地とお別れするかと思うと、「次はいつ来れるかな」などと早速考えてしまう自分もいます。
「夏の北海道×バイク」は、ぼくらの生きがい。
7日目の走行距離: 481km
Day1~Day7の総走行距離: 2,621km
たった7日で2,600km以上も走ったことに驚きです。単純計算で、1日平均350km以上の走行。
なかなかハードな旅程でしたが、事故やケガなく、無事に達成できた自分をほめてやりたいですね。
天晴!
旅のおわりに:旅、出会い、巡るボク
7日間の北海道バイク旅を終えたいま、さまざまな思いが胸に去来します。
毎日、お腹いっぱいになるまで味わった道産グルメ。
本州では見られない、北海道らしいスケールの大きな絶景。
終盤に用意されていた、トラブルと偶然の出会い。
いまは、そのすべてに感謝したい気持ちです。これらの出来事一つひとつが、僕のバイク旅を素敵な物語に仕立てあげてくれたのですから。
一人で走ってキャンプしながら、計画した旅程をしっかりこなして、旅先の絶景と旨い食事を体験できたら、満足しないわけがありません。
ただ、旅の面白みはそれだけじゃないことも知ってます。
人生は一期一会。
出会いはいつだって想定外に訪れるもので、ツーリングプランにあらかじめ組み込むことなどできません。
とは言え、行き当たりばったりだけに任せてしまうと、それはもはや旅ではなく放浪になってしまいます。
目的をもって計画・準備した旅程の中に、偶然というスパイスが適度に入り混じることで、旅がぐんと面白くなるんだと思います。
その意味では、特に最終日は予想外の出来事の連続で、計画通りとはいかなかった点もありましたが、それ以上に大きなもの――「たった一度きりの経験」――を得られたと感じています。
そして、そんな経験を重ねることで人生が豊かになっていくのだと、僕は思います。
旅、出会い、巡るボク。
ツーリングには人生を豊かにするヒントがあると思うから、僕はバイク旅を続けます。
前の記事