新品タイヤの「皮むき」って何? やり方はどうするの? 端まで使った方がいい?
こんなお悩みを解決します。
この記事では、誰でも安全かつ簡単にできる皮むきの方法を解説します。
皮むきの必要性から正しいやり方、やってはいけないNG集まで紹介します。
誤ったやり方で皮むきすると、最悪の場合スリップ・転倒して愛車を傷つけてしまいます。
ここで紹介する方法を実践すれば、絶対に失敗しませんよ。
バイクの新品タイヤには皮むきが必要不可欠!
どんなバイクの新品タイヤにも、皮むきが不可欠です。まずは、皮むきの意味や必要性等の基本を押さえましょう。
タイヤの皮って何?
皮むきとは、新品タイヤの表面にあるツルツルの表皮をはがすことです。
真新しいタイヤを指でこすってみればわかりますが、指がツツツーっと表面を滑っていく感覚が得られます。
これが、まさにタイヤの皮です。
皮があると滑って危険
新品タイヤを皮むきする理由は、皮があると滑って危険だからです。
皮があると、タイヤが持つ本来のグリップ性能を発揮できず、スリップしやすい状態になっています。
実際、新品タイヤは接地感があまり感じられず、急にバンクするとスリップします。
車と違いバイクは、タイヤがスリップすると即転倒する可能性が高く、もしそんなことになれば危険です。
そもそもなぜ皮があるのか?
しかし、なぜ新品タイヤには、わざわざそんな滑りやすい皮がついているのでしょうか?
結論から入ります。
結論 製造工程上、必ずタイヤ表面にツルツルした膜ができてしまう
実はこの皮は、正確にはタイヤ表面を覆っている薄い膜のことで、製造時に使用する離型剤等からできています。
また、ラバーコンパウンド(複合ゴム)には様々な化学品や油分が含まれていますが、それが表面に染み出したものが滑りやすい一因にもなっているようです。
こうした専門的な話は、メーカーの研究者でもない限り、答えを突き止めることはできないので、ここでの深入りはやめておきます。
大事なのは膜のはがし方であって、膜の成分を知ることではありませんからね。
ここまで、タイヤの皮むきの意味や必要性について解説してきました。
絶対失敗しない!タイヤ皮むきの正しい手順5つ
ここからはいよいよ、具体的な皮むきの方法を解説していきますよ。
新品タイヤの皮むきで覚えておきたい大切なポイントは、次の5つです。
- ①丁寧なスロットル操作
- ②ゆっくりと、徐々にバンク角を大きくしていく
- ③無理してバンク角を深くしない
- ④アマリングは気にしない
- ⑤走行距離100kmの間、適正空気圧を保つ
上記に気を付けながら、走行距離100km程度を皮むきの期間とします。
一つずつ、詳しく解説していきますよ。
①丁寧なスロットル操作
丁寧な運転は、タイヤの皮むきで最も大切なポイントです。
新品タイヤはスリップしやすいので、発進時やカーブでの急な加減速は厳禁です。丁寧なスロットル操作を意識しながら、じわっと加速し、ゆっくり減速しましょう。
地面との接地感に神経を集中させながら、丁寧に、丁寧にアクセルを回してください。教習所でバイクに乗っていた頃を思い出して、慎重に運転しましょう。
くれぐれも、「新品タイヤのグリップ性能を確かめてやろう」などと考えてはいけません。そもそも皮があるうちは、タイヤ本来の性能が発揮できないですからね。
発進時に急加速したり、旋回中にアクセルを勢いよく開けたりすると、簡単にスリップして転倒する恐れがあります。
「タイヤ交換後に走り出したら、すぐコケてしまった…」という話はよく聞きますので、くれぐれも注意してくださいね。
②ゆっくりと、徐々にバンク角を大きくしていく
新品タイヤはスリップしやすいので、急激なバンクは厳禁です。カーブを曲がるときは、ゆっくりと、徐々に車体を倒しこんでいきましょう。
そのためには、スピードを控えめにしてゆっくり走行しましょう。車体を傾けなくても十分曲がれるような状態をつくるということです。
その状態を維持しながら、コーナーを2つ3つクリアするごとに、少しずつ車体の倒しこみを強め段階的にバンク角を大きくしていくイメージで走行しましょう。
③無理してバンク角を深くしない
タイヤの皮をすべてはがそうと、無理してバンク角を深くしてはいけません。すべての膜が取れないと皮むきが終わらない、というわけではないですからね。
通常自分が使う範囲内で、皮むきができていればよいのです。サーキットでもない限り、タイヤの端まで使って走ることはまずありません。
公道走行で安全にバンクできる範囲内で走っていれば、ちゃんと皮むきできます。
④タイヤ端のアマリングは気にしない
タイヤのサイドに残った皮がくっきり輪になっているのを、多くのライダーが「アマリング」と呼びます。
ただ、アマリングは全く気にする必要がありません。
世の中には、
タイヤを端まで使えてないのかな…
端まで使えたほうがかっこいいんだけど…
などと気にする人がいるようで、アマリングの消し方を語るハウツー記事も出回っています。
しかし、個人的な意見として言わせてもらうと、そんなつまらないことに気を取られるのは時間の無駄だと思います。
アマリングなんて気にせず、さっさとツーリングに出かけましょう。時間がもったいないですよ。
⑤距離:100kmの間、適正空気圧を保つ
タイヤの皮むきは、適正空気圧で行いましょう。あらかじめ車種ごとに定められている規定の空気圧を保ちます。
わざとタイヤの空気圧を下げて皮むきする人がいますが、これはよくありません。新品タイヤをホイールに組んだ後はじめて空気を入れると、タイヤの構造部材が若干膨張し、ストレッチされます。
そのため、新品タイヤの交換後は若干空気が減りやすく、約1か月で空気圧が10~20kPa(約0.1〜0.2kgf/cm2)減少すると言われます。
30~100kmほど走行して皮むきが終わったら、空気圧を一度チェックしてください。
常に適正空気圧を保つために、以下に紹介するような「エアゲージ」を一つ持っておくと便利です。
安価に手に入るので、必ず一つは手元に持っておきましょう。
さらに、空気入れで便利なアイテムが、次の「エクステンションエアバルブ」。
たまに、バイクのホイールに干渉して空気入れが使えないことってありますよね?
そんな時に大活躍するのがこのエクステンション(延長用)。これ一つで空気入れの成功率が100%になる優れモノです。
ここまで、タイヤ皮むきの正しい手順5つを紹介してきました。
皮むきNG集!よくある失敗4選
誤った方法で皮むきをしてしまうと、危険なだけでなく、タイヤの寿命を縮めることにもつながります。よくある失敗を見ながら、NG行動を知りましょう。
タイヤの端まで皮むきしようと公道で深くバンクする
どうしてもアマリングが気になる人が、やってしまいがちな傾向にあるNG行動。よいことなんて何一つない危険運転です。
サーキットで1、2週すればアマリングなんて消えてしまいますが、公道でそれをやろうと、高速で急カーブに突っ込んでいくライダーがたまにいます。無理な倒しこみは転倒リスクが高まり、他の車両にも迷惑です。
皮むきなんて表面的なものに捉われずに、自然体でライディングに集中したほうがかっこいいですよね
タイヤにパーツクリーナーを直接かける
離型剤を落とそうとパーツクリーナーを直接タイヤに吹きかける人がいますが、これもNGです。ゴムを劣化させ、タイヤの寿命を縮めてしまいます。
一度ウェスにパーツクリーナーを吹いてから、そのウェスでタイヤを拭くという間接的な方法を取る人もいるようです。やりたいことは実現できるでしょうが、タイヤへのダメージはゼロではありません。
素直に道路を走って皮むきするほうが、簡単で早いですよ。
タイヤをヤスリがけする
ケミカル用品がだめなら、力業でヤスリがけだ!という人もいるようですが、これもNG。間違いなくタイヤへのダメージになります。
スリップが心配な気持ちはわかりますが、必要以上に恐れることはありません。
素直な気持ちでライディングを楽しみましょう。
高速道路を走って皮むきする
皮むきが面倒で高速道路でさっさと済ませる人もいるようですが、これもNG。
高速道路では直線ばかりで、タイヤの中央部分しか使えません。
また、タイヤ本来の性能が発揮されていない状態のまま、高速でコーナーに飛び込んでいくのも危険です。
ここまで、皮むき時のNG行動について見てきました。
タイヤの皮むきはどこでやればいい?
「タイヤの皮むきは一体どこでやればいいのか?」という相談を受けることがあります。
答えは、特別な場所は不要です。次の2つの流れを意識してください。
一つずつ、見ていきましょう。
まずは街中走行でOK
まずは街中走行でOKです。交通ルールを守って、安全に市街地を運転しましょう。
ストップアンドゴーや、交差点の右左折等でタイヤの中央付近は自然に皮がむけます。
繰り返しですが、スピードは控え目に、丁寧なスロットル操作を意識しましょう。
自宅近くの幹線道路などで、交通の流れに乗って普通に運転するだけでOKですよ。
次にツーリングに行こう
次にツーリングです。タイヤのサイド部分が使える、緩やかなカーブが連続するワインディングロードを選びましょう。
カーブを一つずつ丁寧にクリアしながら、徐々にバンク角を増やしていくことができますからね。
また、よほど腕に自信がある人を除いて、Rの小さい急カーブが続く峠道を選択するのは控えましょう。
曲がり具合がきつい峠道では、車体制御が難しくなります。
参考:タイヤの慣らしとは?
最後に、タイヤの「慣らし」についても解説しておきます。
タイヤの慣らしとは、タイヤの構造物同士をよくなじませたり、ホイールとタイヤの部品同士にあたりをつけたりすることです。
タイヤは、カーカス・トレッド・ビードなど様々な部材で成り立っています。これらをよくなじませるには、タイヤを揉んであげることが必要です。
具体的には、前・後輪に適度に負荷をかけながら走ることで、タイヤを押しつぶして揉むことができます。
サイド部分までうまく揉んであげることで、タイヤ本来の性能を100%引き出すことができるようになります。
ちなみに、皮むきはタイヤ表面だけが対象なのに対し、慣らしはタイヤ内部の構造も含めた全体が対象です。
また、タイヤの慣らし運転中は、穏やかな運転を心がけましょう。
新品タイヤには、グリップのよい部分とそうでない部分が点在しているため、よく馴染む前に激しい走りをすると、グリップしづらい部分だけが先に減る「偏摩耗(へんまもう)」が起きやすくなります。
まとめ:タイヤの皮むきはご安全に!
今回は、誰でも簡単にできるタイヤの皮むきについて解説してきました。本内容を参考にすれば、初めての人でも失敗しないはずです。
ところで、世の中には、タイヤの端まで皮むきするのを正義と勘違いしている、「アマリングおじさん(アマおじ)」なる存在もいるそうです。
しかし、この記事を読んでくれている賢いあなたは、そんな愚か者の戯言に惑わされる必要はありませんよ!
峠がサーキット代わりだった昔と違い、今どきは安全運転で自然体なライダーが何よりスマートなのです。タイヤの皮むきは、安全第一で取り組みましょう。
ご安全に!
- 丁寧なスロットル操作を意識。バンク角を徐々に大きくする
- 100kmの期間中、常に適正空気圧を保つ
- 端までの皮むきは不要。パーツクリーナー、ヤスリがけ、高速走行はいずれもNG
- 皮むきする場所は、まずは街中走行でOK。次にワインディング
- 皮むきは、安全第一で行うこと